TOKENSKY 【7月4日・5日】

「2018 TOKENSKY Blockchain Conference Tokyo Session」が7月4日と5日に東京都中央区のベルサール汐留で開催されました。ブロックチェーンのコンファレンスは6月26日、27日、東京国際フォーラムでの「Japan Blockchain Conference」-TOKYO Round2018、6月29日にヒルトンお台場で開かれた「Block Co+ Tokyo2018 -Advance the future of Blockchain」に続く3つ目の国際会議となり、東京はまさにブロックチェーン週間になりました。
「TOKENSKY」は中国と日本のブロックチェーン関連企業やオンラインゲーム会社などが参加して開催しており、出店ブースは120余りになりました。汐留会場にはコスプレの姿も見られ、観客の半数近くが中国人の若者といった感じで活気がありました。主催者は5千人を超す入場者になったと報じています。

「世界のブロックチェーン特許の48%は中国で、米国は33%、日本は8%に過ぎない」と開催の挨拶で日本の遅れを指摘したのは、このイベントの主催社の一つアソビモのCEO、近藤克紀氏でした。この出遅れを補うためには、世界のトップを走る人々を日本に呼んで話を聞くことに即効性がある、と近藤氏は指摘し、今後もこのようなイベントが開催されることに期待しました。

基調講演は一橋大学名誉教授でブロックチェーンの著書も多い、野口悠紀雄氏でした。「ブロックチェーンは世の中をどう変えていくのか」との演題で、分散記録の基本構造を解説しました。野口氏は①ビザンチン将軍問題という合意形成の難しさを解決したこと②相手の信頼性をチェックしなくていいこと③銀行などの管理の必要なくマネーを送れること――の3点がブロックチェーン革命を引き起こした、とまず指摘し、この革命でこれまでの巨大組織の時代が終焉し、独立自営業者の時代が到来すると予測しました。

ブロックチェーンはまず通貨として使われ、今後は例えば事故と損害との因果関係をパラメータで計測し、算定の公明性や迅速性が高まるパラメトリック保険や、グループ内での保険をベースにしたP2P保険の基盤技術として使われ大きなインパクトを与えると解説。
証券会社もブロックチェーンの導入により取引が高速化すると期待を示しました。
ICOにおいても資金調達のトークンを実現するのはブロッックチェーンです。野口氏は
「現状はバブルで、各プロジェクトの正確な評価は難しい」と述べながら、「規制するだけの対応は疑問だ。ICOの可能性を踏まえどう取り入れるかが課題だ」と今後の改革に期待を示しました。

「ブロックチェーンの応用は金融にとどまらない」と野口氏はそのインパクトの巨大さを強調しました。
スマートコントラクトによるUberなど「シェアリングエコノミー」の拡大のほかにも、書き換え不可能な強みを生かした公文書の改革で、特許や土地登記など政府の届け出、管理業務などは大幅に縮小されると予見し、すでに導入したエストニアや英国の先進例を紹介。最後に管理者も労働者もいらなくなる分散自立型社会への夢を語り、ブロックチェーン時代にこそ「これからの人間がすべき仕事を見いだすことが大事だ」と語りました。

主催者によると講演とスピーチは150を超えました。そのうちの野口氏を含む主なものの講演メモを以下に紹介します。(敬称略)

 

【講演メモ】

■野口悠紀雄氏

ブロックチェーンの原理は、従来の中央管理者による集中管理からブロックチェーンによる分散記録で公開された台帳に記録することで改ざんできないという説明がなされている。しかし、この改ざんできないというのは実は公開されているからではなく、PoW(
プルーフオブワーク)というコンセンサスアルゴリズムを使っているためだ。この仕組みで簡単には解けないような複雑な計算をさせることで改ざんができない。

ブロックチェーン革命がもたらしたもの
・「ビザンチン将軍問題」の解決・・・PoWによって。
・相手の組織を信頼する必要がない。Trustless社会の実現。
信頼できない人が集まり、信頼ができるもの(通貨の送金など)を扱う。
・銀行などの管理主体を必要としないマネーを送れるようになった。
・信頼があると思われる(巨大組織など)の有利性の消滅→小さな組織や個人にもチャンス
・組織に縛られずに働けるように。→独立自営業者の時代へ

仮想通貨の種類
・ビットコインをはじめとする分散型のもの。管理者のいない通貨ということで国家の独占を破る。
・メガバンクの仮想通貨 (日本だとみずほ、UFJなどがコインを作るといっている)
・中央銀行の仮想通貨→これが普及してしまうと、他の銀行がなくなり全ての情報を中央銀行が握ることになり、結局中央管理者が管理するということになりビットコインの目指した世界ではなくなる。

ブロックチェーンの応用(金融)
通貨として:ビットコイン型、メガバンクの発行する、中央銀行が発行する 仮想通貨
資金調達として: ICO 2017年夏頃 バブルを迎え、怪しい企業が多発→世界中で規制
保険:P2P保険、パラメトリック保険(事故を起こした時などに算定する期間などをなくし、即時入金)
証券:取引は高速だが、清算と決済に時間がかかっていたものをブロックチェーンで高速化

ブロックチェーンの応用(金融以外)
・シェアリングエコノミー:スマートコントラクトで自動化
Uber(カーシェアリング)やAirbnb(民泊)のような仲介者がいない仕組み
(民泊やアパートの鍵問題もブロックチェーン・スマートコントラクトでカギが不要に)
・IoT
・文書の存在証明・商品の履歴追跡:公文書の管理→ブロックチェーンによって改ざん不可。エストニアでは既に実装化へ
・予測市場:胴元がいない透明なシステム

株式会社の自動化の2つのパターン
(1) ロボット化
労働者の仕事の自動化
工場のオートメーション
銀行窓口をATMに
(2) ブロックチェーンの利用
管理者の仕事を自動化
ルーチンワークをブロックチェーンで自動化
DAO(Decentralized Autonomous Organization):労働者はいるが、経営者がいない


全てがAIにとって代わられるわけではないので、人間がする必要がある(しなければならない)仕事というものを探し出すことが重要。

 

■津田大介氏(ジャーナリスト 早稲田大学文学学術院教授)

・ブロックチェーンはインターネットと同じようなインパクトを与えており、大きな可能性を秘めている。
・村井純(日本へのインターネット紹介の第一人者 慶応義塾大学教)はインターネットの可能性につき
Internet for computer
Internet for everyone
Internet for everywhere
と表現して、コンピュータが世界のすべての人々をコンピュータで結ぶと期待し、その将来と理想を語った。
・いまインターネットの世界の利用者は53%で、ソーシャルメディア利用者が42%、携帯利用者が65%、スマホ利用者が39%になる。
しかしインターネットを利用できていない47%の人々も忘れてはならない。

・2011年にインターネットへのアクセス権を巡り、「インターネットは民衆が正義と平等、人権の尊重を求める際に核となる役割を果たす」と国連の特別報告がされた。
以降、国家など強権によるインターネット遮断は国際法違反だという主張も広まりつつある。インターネットのアクセス権を認める国も、フィンランド、フランス、ノルウェーと続いている。

・2006年から同07年にかけて、ツィッターやフェイスブック、アイフォン、アンドロイド、ニコニコ動画、クラウドなど新しいソーシャルメディアと関連技術が出現した。これは「第2インターネット時代」といえる環境を形成した。
・2011年から17年の間に。スマホは13人に1台から1.5人に1台 ツィッターのアクティブユーザーは19人に1台から3人に1台というような劇的な普及を見せている。
・プラットホームが広告仲介業で富を集約し、グーグル、フェイスブック、アマゾンなどの覇権を生み出した。
・時間と場所の制限がないインターネットの普及でコミュニケーションの拡大と、機会均等を生み出した。一方で巨大なポータルサイトなどが生まれ、富の格差拡大も進んでいる。
・ブロックチェーンは手順のプロセスを公開し、リアルタイムで情報の取引が正しいかどうかが判定できる。情報の独占を防ぎ、検証のプロセスを省略し、個人の力の最大化ができる。
・ブロックチェーンはCSR(企業の社会的責任)とNGO、NPOを結ぶツールになりえ、難民のID化や寄付金の使途のオープン化にも役立つ。活動の資金調達や補助金の手続きの簡略化も可能で、人で不足の解消にも役立つ。
・日本は大きなプラットホームの形成は苦手だが、ブロックチェーンを使った細かなサービス、ソリューションを開発するのは得意なはずで、この面での貢献、活躍に期待したい。これが村井の理想としたインターネットを人々の手に戻すものだ。

 

■佐々木俊尚氏(ジャーナリスト)

・20世紀の産業構造はモノやサービスを作り、販売する、企業から消費者へという垂直統合だった。それをインターネットが製作者と消費者を直接結ぶ水平分離の構造へ変化させた。それがAIとIoT(モノのインターネット)により再び垂直統合という2回目の変化を生んでいる。21世紀型の有機的統合だ。
・トヨタとウーバーの提携は、高度な配車×自動運転=公共自動車サービスといった式に表現できる。単にシェア(共有)を増やすというだけでなく、車の概念を革命的に変えてしまう要素をもっている。
・車は所有から共有へ。コンピュータもスタンドアローン型からクラウド型に。ともに新しいフローの時代を迎えている。
・フローの時代を支える3つの技術がある。①IoTによるデータの圧倒的集約②AIによる最適化③ブロックチェーンによるデータ管理――だ。
・AIのディープラーニングは人間では見いだせない対象の特徴を見つけ出す能力だ。そこでは因果を求めるのではなく、相関だけに注目する。それが人間にない新しい視点を提供している。
・ブロックチェーンの特徴は①台帳の分散管理②裏切者がいても成立する③運用は分散行い、データは共有という要素にある。それにより自動化されたプラットホームは巨大化を防ぎ、民主化されたデータ利用を可能にする。

 

■中島真志氏(麗澤大学 経済学部 教授 アフタービットコイン著者)

・もともとビットコインの中核を成すものとしてブロックチェーンができたが、現在はブロックチェーンが主役の世界になっている。ビットコインがブロックチェーン1.0の時代、ここから今はビットコイン2.0・3.0の時代へ。

DLT(ブロックチェーン)のメリット
① 不正・改ざんできない。:1つ前のハッシュ値を含める
② システムダウンに強い:分散型
③ 運用コストが安い:巨大なセンター(バックアップなど)が不要

 

★ブロックチェーンの2つのタイプ


今後はクローズド型が主流になっていくと考えている。

 

ブロックチェーンの応用
① 国際送金・・・従来は送金速度が遅い・料金が高い・分かりにくい、だった。
例)リップルはそれをほぼリアルタイム、しかも約10分の1のコストで送金可能に

② 証券決済
例) ナスダック(アメリカ)「ナスダック・リンク」
ASX(オーストラリア)・・・株の清算・決済の次期システム

・ブロックチェーンに適した業務
(1) 複数の当事者が同じ情報をリアルタイムで共有することにより効率化が図れるもの
例)貿易金融(トレード・ファイナンス)、保険申込書類の確認作業(FAXからの脱却)

(2) 取引を改ざんされないように長期保存
例)ダイヤモンドの取引履歴の管理:エバーレッジャー社(ロンドン)
不動産の登記:スウェーデン・ウクライナで実験
食品の流通経路:ウォールマート 豚肉の管理
サプライチェーンマネージメント(部品の供給元の管理):アウディ・サムスン電機
(3) スマートコントラクトを利用できる事業
例)保険会社AXA(フランス)によるフライト遅延保険(「fizzy」)

・しかし、スマートコントラクトに関しては万能感を持つのは禁物。
なぜなら、事前にすべてのケースを決めておくのは不可能で、想定していない事態が発生する可能性もある。

・ブロックチェーンをどのように使うか?
シーズ主導(とりあえずブロックチェーンを使って何かしよう)はうまくいかない。
あくまでも問題に対するソリューション(解決法)でなければならない。
=ニーズ主導(不便なことは何か?手間がかかって非効率なものは何か?)

10年単位の話だが、
ブロックチェーンは世界を変えると思っている。
2.0で金融が変わり、3.0で世界が変わる。

 

■増島雅和氏(森・濱田松本法律事務所の弁護士)

・現在の仮想通貨・ICOなどに関する規制は混沌としている。
日本の監督官庁は適正な事業者に適正に行ってほしい(やるべきことをやって)と言っているが、やっと事業者に行政指導を出したりしてひと段落したところ。
今後は自主規制になっていく(分別管理・決済など厳格に)

・現在、海外の事業者が日本に参入してくるのは厳しい。
こういった中で先日コインベースが日本に参入するといったようなニュースがでたりして、厳しいということを知ったうえで日本に参入してこようとしている企業もある。日本マーケットに入るためには日本で定められたように登録をしないといけないので。外人たちはしばしば、「日本はアイソレイト(特にクリプト関連で孤立)された国である。」と言っている。)

・今のところ日本では証券とトークンは分別して考えるとしているが、世界的には証券とトークンは混ざり合っていくと考えている人が多い。

・金融庁が仮想通貨をはじめとしたクリプト業界のすべてを理解しているわけではなく、一応研究会で検討を行って規制を決めたりしている。(しかし、この研究会にも世界的なクリプト関係者が入っていない)

・自主規制機関についてもICOについては定まっておらず、引き続き不透明な姿勢をとっている。

・日本はもうダメだ、と言っている声がよく聞こえるが、中国を見てほしい。
政府から全面規制と言われても香港に本拠を移したりして堂々とやっている。日本はまだ全面規制でないだけまだマシだ。それに、日本がダメなら外国に行けばいい。SECが・・・というならまた外国に行けばいい。

・残念ながら日本の法曹界は年功序列であり、今後もさらに規制する方向へ行くかもしれない。しかし、ICOは禁止されても外国でICOして取引所に上場するということはできる。

・日本の規制については自分も含め良い方向に進むように頑張るが、世界に目を向けて考えることも必要。